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vol.7 水に棲む home
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漢字「洪水吐」さあ、どう読む?
 
宮ケ瀬ダムの最新兵器だ、その名も「選択取水設備」
妥協点は4500万立方メートル  
表層水取水時 中間層水取水時
「選択取水設備」なんてものが宮ケ瀬ダムにはある。湖底に近いほど水温は低い。そのまま放流しては、魚をはじめとする下流域の生物の生態に影響がでる。その弊害を避けるための設備で、任意の位置で水をキャッチし、放流できる。発電に使う放流はこの設備が行っている。
 
「洪水吐」と書いて、「コウズイバキ」と読む。みごとなまでの専門用語である。
「ダムの目的のひとつは洪水を防ぐことです。ダムに一時的に貯めて、すこしずつ放流するのです」と城田さん。
 計算上、宮ケ瀬ダムには、最大毎秒1700立方・の水が流入する。いっぽう、放流は最大毎秒100トンである。
 宮ケ瀬ダムは標高286mまで貯水できる。しかしそうしておくと、緊急な増水のとき溢れる危険がある。したがって、つねにすこし足らない状態にしておく。だが、あまり足らない状態でも、困る。
「水道側からするといつも満杯でいて欲しいわけです。洪水に視点を移せば、なるべく水位は低いほうがいい」
 というわけで、宮ケ瀬ダムの場合、夏場には4500万立方・分を下げておくのが常態という。水道と洪水の妥協点である。
 毎秒100トンの放流は基本的に、正副ある「高位常用洪水吐設備」の、正の放流管が使われる。だがじっさいには、毎日放流している「選択取水設備」が洪水防止に機能している。この設備はなぜ常時放流しているか? 発電しているからである。
 
低位常用洪水吐設備  
低位常用洪水吐設備(図) 連続した洪水のとき貯水位の調整に使われる・・・「低位常用洪水吐設備」である。水深115mの位置にあり、「高圧ラジアルゲート」としては日本一の高水圧設計だという。洪水を予防する予備的な装置である。しかし「常用」という名称でわかるように、危機的状況で使われるものではない。
 
高位常用洪水吐設備  
高位常用洪水吐設備(図) 下流を洪水から防ぐ主役の設備・・・「高位常用洪水吐設備」は、メインの洪水調節設備である。宮ケ瀬ダムの洪水期制限水位は標高275.5mで、この設備はそれより40.5m低い位置に設けられている。洪水で制限域まで貯まるその40mのあいだに放流するという寸法だ。イラストだと複雑な印象を与えるが構造自体はシンプルである。
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