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下水管には傾斜がついている。であればこそ汚水が流れる。しかしそれだとどんどん深くなっていくだろう。なるのである。先に行くにしたがってしだいしだいに深く潜行する。しかしそれでは困る。というわけで「途中にポンプ所を設けています」。そこでいったん地表近くまで吸い上げ、ふたたび傾斜をつけた下水管へ送り込む。そうやって下水処理場へ下水を導くわけだ。ポンプ所が東京23区に68カ所、多摩地区に23カ所ある。
しかし場所によってはかなり深く下水管が潜っているところもあるだろう。「いちばん深いところで東糀谷の地下約30メートルというのがあります」。30メートルは深い。埋立地や平坦な所では自然の勾配に頼れないからどんどん深くなる。「基本的には川に沿っているんです」。それはいい考えだ。とうに気づいているか。
23区には処理場が13カ所ある。多摩地区には7カ所ある。普及率は23区が100パーセント、多摩地区は平均で92パーセント。ふつうは市町村が単独で下水管と処理場(公共下水道)を持つが、多摩川の場合は「流域下水道」と呼ばれ、単独の市町村の枠を超えて下水処理にあたる。流域全体を見渡した環境保全ができるメリットがある。多摩川上流処理場には、処理水による水族館まで作られていて、見学者を楽しませる。
分流式の場合、生活排水と雨水は別の管を流れる。生活排水管は処理場へ、雨水管はそのまま川へ流される。家庭からでる水はすべて処理場へ行く。「油を流してはいけない」という、あの戒めはなにか。台所から直接海へは注がないではないか。「油が下水管の内側にくっつく。すると径が小さくなり性能が落ちる。合流式だとあふれたときに困る。処理場できれいにするにも時間がかかる」。処理場がいかに優秀であるとはいえ、問題はそれ以前にあり、かつ処理能力にも過大な負担をかける。やっぱり油を台所から流してはいけないのだ。 |
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笠原さんと処理場を歩く。展望台にあがる。「あのあたりでクジラの骨が発見されたんですよ」。指さす先は目と鼻の先の多摩川。かつてここは海だったか。「だから昭島市のマンホールにあるマークにはクジラが描かれている」。処理場内をあちこち移動する。じつは恐れていたことがある。臭気である。ウンチは処理場へくるあいだ溶けてしまっている、とは聞いている。しかし臭気は消えまい。ところが、臭わないのだこれが。
「臭気にはカバーをかけることで対応しています」。生物反応槽へやってきた。汚水処理のキモ、微生物分解である。「じゃあカバーを開けますよ」。覚悟を決めたが、意外や臭気はそれほどでもない。灰色とも茶色ともつかない汚濁した水面がぐらぐらとゆれている。「微生物を活動的にするために空気を送り込んでいるんです」。微生物、を誤解していた。なにも特別なものではない。優秀な微生物を「発見」したり「開発」したりしてはいない。どこからか持ってきてもいない。下水のなかにいる微生物をそのまま使っているのだそうだ。
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処理場へきた下水は、まず沈砂池で土砂を沈殿させる。ついで第1沈殿池を2〜3時間ゆっくり流し、細かな汚れを沈殿させる。そのつぎにやってくるのがここ生物反応槽だ。生物反応槽にはじっくり6〜8時間滞在する。それから第2沈殿池へ行き、3〜4時間ゆっくり流れながら、生物反応槽でできた固まりを沈殿させる。うわずみが塩素で消毒され、場合によってはさらに高度処理され、めでたく自然界へ放流されるわけだ。
処理のプロセス数カ所で汚泥が生じる。こいつをどうする。「きれいにすればするほど汚泥がでる。燃やすんです。で、できた灰を埋め立てに使ったりする。多摩処理場ではセメント会社にひきとってもらってます」。アスファルトの混合物にしたり、レンガを作る。100パーセントの資源化を目指しているそうである。 |
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住所 |
〒196−0024東京都昭島市宮沢町3−15−1 |
TEL |
042(545)4120 |
見学 |
原則として1人からOK。ただし事前に電話予約が必要。 |
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