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vol.7 水に棲む home
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真水に棲む、海獣。
 
気候帯別に世界の希少種が集まる
そういえばライオンはインドにもいた。野生では現存約300頭。ズーラシアでも見ることができる。
   1999年4月に新しい動物園が誕生した。その名も「ズーラシア」という。正式には「よこはま動物園ズーラシア」である。ズーラシアというネーミングが素晴らしい。雄大でいかにも生態的な印象を受ける。
 歴史上、洋の東西を問わず、王侯が珍しい動物を飼育していた。それを動物園と呼べるだろうか。呼べないのである。一般に公開されないからだ。不特定多数の人々が見れることが、動物園の条件のひとつなのだ。

亜寒帯の森のそばにある「アラースの谷」。熊の親子の彫刻が風景に生きものの息吹を与える。 亜寒帯の森のそばにある「アラースの谷」。熊の親子の彫刻が風景に生きものの息吹を与える。 世界ではじめての動物園はいつ、どこに生まれたか。動物園という名称ではなかったものの、フランス・パリの動物飼育場が1793年あたりに一般公開されていて、最初の「動物園」ということになる。明確に”動物園 ”と意識して作られたのは、1828年開園のロンドン動物園。こちらを世界最古の動物園と見る人もいる。
 たしかにズーラシアは大きい。全面開園すれば53.3haとなり、上野動物園14.1ha、多摩動物園50.3haを上回る。生態的な、という期待も裏切られない。気候帯別に動物たちの生息環境を再現している。ゾーンは、中央アジアの高地、オセアニアの草原、亜寒帯の森、アジアの熱帯林、アマゾンの密林、日本の山里、の6つ。気候帯の名前を聞くだけで心躍りはしないか。植物は、横浜で生息可能な植物のなかから、たとえば熱帯のヤシ、亜寒帯のアカエゾマツというぐあいに、当地のイメージをそこなわない植物が選ばれている。
 かんじんなのは動物である。動物に魅力がないのは困る。ズーラシアはここがすごい。世界の希少種を中心に集められている。日本初上陸のオカピ、野生では300頭ほどしか生存していないインドライオンなど、希少種は38種がいる。とりわけアジアの熱帯林で飼育されているドゥクラングールは幻のサルといわれ、ズーラシアでしか見ることができない。日本の山里ゾーンには、国内では見られなくなったコウノトリがいる。
 
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噴水は工業用水霧は上水
ズーラシアでは1日500リュウベの工業用水を使い、ホッキョクグマは500リュウベの水槽に棲む。
雑用水タンクのまえの施設担当の打木進さん。1日500トン、工業用水を貯める。 生き物に水は不可欠だ。だから動物園ともなれば水について興味津々な話がごまんとあるに違いない。はじめにお断りしておくと、その期待は裏切られた。よく考えてみると、それほど水は生命に不可欠なものといえるだろう。人間も水なしでは生きられないから「常識」として、だれもが水の知識をそうとう持っている。
 獣舎の清掃などに使う雑用水には工業用水を使っている。1日500リュウベ。とほうもない水量ではないだろう。「工業用水にしているのは予算節約のためです」とは施設担当の打木進さんだ。「1リュウベで上水は410円、工業用水なら40円なんですよ」。なるほど安い、10分の1だ。水道局の鶴ヶ峰浄水場から約2キロの距離を150mmの送水管で受け入れる。園内ではいちど濾過器を通し、雑用水タンクに貯める。「使うのは清掃のほかに、ヘキセン、噴水。霧は上水を使う」。とっさには意味がわからない。ヘキセンとは壁の泉である。壁を伝って水が流れ落ちる施設のことだ。霧がなぜ上水かというと、ジャングルのイメージを演出するため来園者通路に霧を発生するが、霧だと呼吸のさい肺まで吸い込み、人体への悪影響を考慮して上水、なのだ。


 
ホッキョクグマが同じ動きを繰り返しあきず遊んでいる。快適そうだ。もちろん淡水。「カイジュウシャでは大量に水を使っています」。カイジュウシャ? 海獣舎である。ホッキョクグマ、ミナミアフリカオットセイ、フンボルトペンギンの3種が棲む。「水槽の大きさの第1位はホッキョクグマで500リュウベ、2位オットセイ400、3位ペンギン200です」。水槽の水は循環し濾過することで、清潔を保つ。ズーラシアでは上からばかりでなく、ガラス越しに水中のようすも観察できるから、水の透明度を保つのは重要なことなのだ。水の交換は、夏場なら月1回、冬なら2、3ヶ月に1度といったところ。ホッキョクグマの水槽の水を換えるとなると、ズーラシアの雑用水がまるまる1日分使われることになる。 ホッキョクグマが同じ動きを繰り返しあきず遊んでいる。快適そうだ。もちろん淡水。
 
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