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動物園の条件は「一般公開」ばかりではない。条件とはいえないかもしれないが、「自然保護」の理念のあることも、最近では重要な要素となっている。希少種が多く集められているズーラシアであればなお、自然保護には敏感なはずである。「そうなんですよ、日本初の繁殖センターがあります」。動物担当の板橋正憲さんは誇らしげだ。ここで生まれた動物たちが将来、野生へ戻ることを夢見ているそうだ。野生ではわずか300頭ほどしか生存していないというインドライオンの赤ちゃんが2000年にズーラシアで誕生している。素晴らしい。
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板橋さんと園内へでた。ズーラシアには柵がない。動物のいる展示場と観覧者のあいだには、モートと呼ばれるおおきな溝があるだけだ。自然との一体感を味わえる方法である。海獣舎はどれも、上からと下からみることができる。陸地と水中、両方の生活を観察できる。ホッキョクグマがタイミングよく泳いでいた。ただしガラス窓の位置から遠く、濾過器で水を常時清潔に保っているとはいえ、さすがに見えない。上から見ると、同じ動作を繰り返している。仰向けに浮いて岸を蹴る。すーっと流れて岸壁に後頭部がゴンとあたる。
それが好きらしい。
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「オットセイはオスとメスではカラダの大きさがぜんぜん違います」。とうぜん大きいのがオス。よくみると群れにオスは一頭。「自然環境と似せて作ってますから」。やっぱりハーレムなのだ。下のガラス窓から見ると、なるほどオットセイは頭がよい、好奇心もあらわな視線を泳ぎながら投げてよこす。それにしても泳ぎっぱなし。しじゅう呼吸のため水面へでる。頻度高く呼吸しなければならないなら、なぜ海中で過ごすのか。はて?
ペンギンは鳥だ。「そうなんです。だから絶対水中を泳いでいるところを見ていただきたいです」。鳥類は空を飛ぶ、海を飛ぶ。気体と液体の違いはあるが、力学はおなじに違いない。羽ばたく動作はまったく同じだ。 |
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