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vol.7 水に棲む home
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真水に棲む、海獣。
 
わたしもここに住みたい
どこもほんものの生活環境のように住み心地がよさそう。
   動物園の条件は「一般公開」ばかりではない。条件とはいえないかもしれないが、「自然保護」の理念のあることも、最近では重要な要素となっている。希少種が多く集められているズーラシアであればなお、自然保護には敏感なはずである。「そうなんですよ、日本初の繁殖センターがあります」。動物担当の板橋正憲さんは誇らしげだ。ここで生まれた動物たちが将来、野生へ戻ることを夢見ているそうだ。野生ではわずか300頭ほどしか生存していないというインドライオンの赤ちゃんが2000年にズーラシアで誕生している。素晴らしい。


オットセイはいっときも休むことなく泳ぎ回っている。知的な動物らしく好奇心いっぱいの目をこちらに向けてくる。 オットセイはいっときも休むことなく泳ぎ回っている。知的な動物らしく好奇心いっぱいの目をこちらに向けてくる。 板橋さんと園内へでた。ズーラシアには柵がない。動物のいる展示場と観覧者のあいだには、モートと呼ばれるおおきな溝があるだけだ。自然との一体感を味わえる方法である。海獣舎はどれも、上からと下からみることができる。陸地と水中、両方の生活を観察できる。ホッキョクグマがタイミングよく泳いでいた。ただしガラス窓の位置から遠く、濾過器で水を常時清潔に保っているとはいえ、さすがに見えない。上から見ると、同じ動作を繰り返している。仰向けに浮いて岸を蹴る。すーっと流れて岸壁に後頭部がゴンとあたる。
それが好きらしい。


  フンボルトペンギンが動物担当の板橋正憲さんを不思議そうに見ている。「オットセイはオスとメスではカラダの大きさがぜんぜん違います」。とうぜん大きいのがオス。よくみると群れにオスは一頭。「自然環境と似せて作ってますから」。やっぱりハーレムなのだ。下のガラス窓から見ると、なるほどオットセイは頭がよい、好奇心もあらわな視線を泳ぎながら投げてよこす。それにしても泳ぎっぱなし。しじゅう呼吸のため水面へでる。頻度高く呼吸しなければならないなら、なぜ海中で過ごすのか。はて?
 ペンギンは鳥だ。「そうなんです。だから絶対水中を泳いでいるところを見ていただきたいです」。鳥類は空を飛ぶ、海を飛ぶ。気体と液体の違いはあるが、力学はおなじに違いない。羽ばたく動作はまったく同じだ。
 
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氷は好き、しかし理由が違う
海獣は真水に棲み温度管理はなし。この事実に驚く。
ペンギンが水を飛ぶ。滑空すれば羽ばたきもする。まさしくペンギンは鳥類。 疑問がある。水は工業用水であるにしても、浄水場からきている。淡水だ。しかし海獣舎の3種の動物はいずれも海水に棲む。棲まないまでも、海水になじんでいる。だいじょうぶなのか。それともなにか工夫があるのか。この返事があっけなかった。「淡水でだいじょうぶなんですよ」。正直、苦労話を期待していた。たとえば、どこからか潮水を運んでいるとか、台風で運搬できないときはアセった、とか。落胆する。なにもなかった。「鳥類と、ほ乳類でしょう、肺で呼吸している。エラじゃないんです。だからだいじょうぶ。だいたい水のなかにばかりいるわけでなく、陸上の生活もするのですから」。そんなものか。
 しかしたとえばクジラやイルカはどうなのだろう。ほ乳類でもつねに海中で生活する。「かれらはダメでしょうね。適応の程度かな。皮膚をみても、この3種には毛があるでしょう。だけどクジラやイルカにはない」。ただこんなことはあるらしい。「オットセイは目がすこし変色している。塩素のせいだと思う」。では、ペンギンやホッキョクグマはどうかというと、こちらはぜんぜん影響なし。理由はよくわからない。「目の防護システムが違うのか、それとも感受性が違うのか」。感受性? 眼の粘膜の感受性のことだ。
 つぎなる質問。水温の調整はあるでしょう、なんてたって、ホッキョクグマっていうくらいだから。ペンギンだって寒い地方の動物だし。「いえ、温度管理はしてません。ぜんぜん」。はあ? 理由は? 「一部の動物を除けば、水温を調整する必要はないのです」。なるほどのような、そうでもないような。「ただあんまり暑いとホッキョクグマに氷を与えます」。
 ほら、やっぱり。「いえいえ、氷で遊ぶのが好きなんですよ」。意外というかたくましいというか、海獣は日本の温度調節なし淡水でも生きていけるのだった。
ペンギンが水を飛ぶ。滑空すれば羽ばたきもする。まさしくペンギンは鳥類。
 
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よこはま動物園ズーラシア
住所 〒241-0001 横浜市旭区上白根町1175番地の1
TEL 045(959)1000
開園 9:30〜16:30
休園日 火曜日 ※夏休みは無休 (祝日の場合は開園、翌日休園)
入園料 大人600円、中人300円、小人200円
幻のサル、ドゥクラングール。ズーラシアだけでしか見ることができない。
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