vol.6 健康とおいしい水

　オゾン処理された水は、今度は生物活性炭吸着処理される。金町浄水場では、高度浄水処理が導入される以前には粉末活性炭を使用していた。昭和４７年の夏ごろから発生した水道水のかび臭を除去するためにだ。そのときに使用した活性炭は、たんなる粉末状のものにすぎなかった。高度浄水処理では活性炭の前になぜか「生物」がつく。活性炭に微生物が住みついているからである。これが秘密その２だ。

　活性炭そのものには、表面に無数の小さな穴がある。ひとつの穴の大きさは最小のもので１ナノｍ。およそ１００万分の１ｍｍの極小な穴。

「わずか１ｇの活性炭でも、表面積に換算すると１０００㎡にもおよびます。その内部表面積が大きい活性炭に、臭いの原因となる有機物質を吸着させるのです」

　ここまではフツウの活性炭でできる。生物が住むとどういうちがいがあるのか。ひとつはカルキ臭の原因物質であるアンモニア性窒素を、活性炭に住みつく微生物が分解するということ。

「もうひとつは活性炭そのものを微生物がリフレッシュさせてくれます。活性炭の吸着力は６ヶ月で下降しはじめます。１年もたつと交換しなくてはならない。でも微生物が活性炭に吸着した有機物を分解処理するおかげで、活性炭の寿命が４年にのびました」

　金町浄水場の生物活性炭吸着池の数は２４。それぞれが幅９．１ｍ、長さ１３．８ｍ、深さ６．５ｍの池で、活性炭層は２．５ｍもの厚さがある。そこをゆっくり水が通りぬけると、いよいよ色も臭いもほとんどない水に変わっているのである。

ほんとに高度浄水処理した水道水はおいしいんですか？

ええ、自信をもってそれはいえます。平成１０年、金町浄水場で、３９２人の一般の方々に『水の味くらべ』をしたことがあります。結果は下の表でもわかるとおり、ミネラルウォータと遜色ない結果になりました。

せっかくおいしい高度浄水処理した水を、トイレやお風呂などの生活用水にするのはもったいなくないですか？

飲用と生活用水の二系列配水にする案はたしかにありました。ただ配水管工事をするには莫大な費用が生じますし、維持管理費もかかりますでしょ。ならばいっそすべての水を高度浄水処理水にしてしまったほうがコストがかからないという計算がされたんですよ。

高度浄水処理された水の安全性はどれほどあるんですか？

おいしいだけでなく、安全面が向上したことも申しあげたかったので、この質問はうれしいですね。下の表を見てください。臭気物質の１００％、有害物質の大半を除去できるようになりました。

高度処理の効果

項目

除去率

２－メチルイソボルネオール（かび臭物質）

１００％

アンモニア性窒素

１００％

陰イオン界面活性剤（合成洗剤）

８０％

トリハロメタン生成能

６０％

高度浄水処理って聞くとなんだか高い水のように思えますけれど。

いえいえ、おいしくて安全なうえに、こんなに安い水はないですよ。みなさんがよく買われるペットボトル入りのミネラルウォーター、２リットル２００円で買えるか買えないかでしょう。高度浄水処理水は１８０円あれば１０００リットルの水が買えますよ。

高度浄水処理ってなんだかとっても時間がかかる処理のようですが？

これまでの浄水法と大差はありません。わずか１時間ばかり長くなるだけですみます。