首都東京がのっかる武蔵野台地。ここを流れる野川という川は、崖線に湧き出る多くの湧水を集めて流れとなったもので、1970年代中頃でも72か所の湧水地点が確認されていました。ところが、10年後には3分の1が失われてしまったのです。この疑問を解くために、井戸を使う人々や井戸を掘った人たちに語り継がれてきた言葉「水みち」をたよりに、各地に水みち研究会(代表神谷博氏)が誕生し、研究が始まりました。実態が明らかになってきた水みちのなかから、代表的なものをいくつか紹介します。
井戸の語源は水の集まるところ(井處)であり、昔ながらの掘り抜き井戸には、蓋を開けて中を覗くと水の流れが見えるものもあるといいます。井戸は水を探して掘られたものですが、「井戸は使えば使うほどよい」ともいわれてきました。水を汲み上げることによって地下の水が動き、毎日使うことで水の通り道はより通りやすくなって、水みちがつくられていきます。逆に使わずに放っておくとだんだん目詰まりして、水の出が悪くなってしまいます。
湧水の多くは崖の下から湧いています。崖があることで地下水にも落差が生じ、出口を求めて土の中から流れ出て、湧水となるのです。いったん出口ができれば、通りやすいところを通って水が集まり、細かい砂を押し流してますます流れやすくなって水みちとして固定します。湧水が昔からいつもほとんど同じ場所から湧いているのは、落差という重力の力によって、強制的に水が動かされ続けているからです。
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