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農林水産省が、全国のため池の中から選定した「ため池百選」。ため池の歴史や役割、保全の必要性について知ってもらうきっかけとして、平成21年4月より募集が始まり、平成22年3月に公表されました。選定されたため池は、いずれも人工的に造成されている池で、いなみ野ため池ミュージアムや寺田池も選ばれています。
全国の「ため池百選」の中から、一部をピックアップしてご紹介します。



南湖(南湖公園)は日本最古の公園と言われており、1924年(大正13年)12月には国の史跡および名勝に指定されています。秋には、水面に映り込む紅葉が美しいと、紅葉の名所としても知られています。






満濃池は、丸亀平野約3,200ヘクタールを潤す、弘法大師空海が築造した日本最大級の灌漑用のため池です。降雨の少ないこの地域の灌漑の役割を担っていることから「讃岐の水がめ」とも呼ばれています。毎年6月に行われる「ゆる抜き」は、讃岐の夏の風物詩にもなっています。





東山魁夷作「緑響く」のモデルとしても有名な「御射鹿池」。長野県茅野市の標高1,500メートルの山の中にあり、鏡のように美しいコバルトブルーの水面が訪れる人々を魅了しています。最近ではCMのロケ地や観光スポットとしても注目されています。






中世ヨーロッパの古城を思わせる「豊稔池堰堤」は大正15年に建設されました。豊稔池堰堤の構造はマルチプルアーチ式という日本に2例しかない貴重な形式のダムで、平成18年12月19日には国の重要文化財(建造物)に指定されました。高さ約30メートル、長さは約145メートルあり、下から見上げたその姿は壮観です。





津軽富士見湖(つがるふじみこ)の愛称で親しまれ、テレビドラマのロケ地としても有名な西津軽のため池。池には、全長300メートルの日本一長い木造の三連太鼓橋「鶴の舞橋」がかかっています。野鳥の楽園とも言われるほど多くの野鳥が訪れるため、四季を通して野鳥の観察を楽しむことができるため池です。





古事記や日本書紀にも登場する7世紀前半に築造された、大阪府大阪狭山市にある「狭山池」。1400年にわたってその機能を維持・継承されてきており現存する日本最古のダム形式のため池と言われています。狭山池公園は桜の名所としても知られており、春には多くの花見客で賑わいます。


読者の皆さまへのメッセージ

かつて農地を潤し、生活を支え続けたため池が、昨今の豪雨を前にして「不用なもの」、「危険な場所」として認知されることが気になります。しかし、正しく管理されたため池は美しいだけでなく、急峻な地形を有する日本では防災に役立ち、多様な生き物が生息する”命の器”として、とても貴重な存在です。また、防火用水や生活用水としてはもちろん、レクリエーション空間、文化資源、交流資源として、人々の生活を潤してくれます。皆さまの地域にあるため池は、どんな歴史があるでしょうか。今、どんな役割を担っているでしょうか。かつて、命の水を確保するために懸命に努力した人々がいます。その恩恵の上に、今の私たちの生活が成り立っています。人と水の歴史を思い、また豊かな水の恵みを未来に継承するために…。ため池について興味や関心を持ち、"共生の原理”を有しているため池の存在価値を理解していただけたら嬉しく思います。

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