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ため池の種類

ため池は、自然の地形を最大限に利用してつくられており、立地によって池の形態や水質、環境などが異なります。平野部では、窪地の周囲に堤防を築いてため池をつくりました。水深は比較的浅く、底が平らな形になることから「皿池」と呼ばれています。
丘陵地や山間部では、谷をせき止めてつくった「谷池」と呼ばれるものが多く見られ、堤防(池尻)側は水深が深く、岸辺も急勾配なので水生植物は多くありません。一方、池の奥(谷頭)側の浅水域や湿地は、自然度の高い水辺になっています。谷池は、谷筋に沿って棚状に3、4個の池が連なっている場合も多く、それらは「重ね池(親子池)」と呼ばれ、特有の景観を形づくっています。

ため池の水の流れ

ため池へ流れ込む水は、ため池上流の集水域に降った雨が集まってできたものです。水は、受益域で農業用水として使われた後に、水路を通じて河川に流れ込み、それがまた雨となって上流に戻るという循環を繰り返しています。


高度な水利技術に
驚かされます!

ため池は単体の池だけではなく、重ね池のように親池・子池の関係で、それぞれがつながって存在している池もあります。ひとつの池が消失することで、他の池が涸れたり溢れることもあり、先人は緻密な計算によって、ため池同士をつなぐ疏水を設計しました。地形や雨量を熟知し、絶妙なバランスで自然環境と調和していたのです。
また、日本のため池や疏水造成の水利技術は、ローマの水道橋に通じる技術が見られます。全くの偶然か、それとも先人がローマに渡って学んだのか。いずれにしてもコンピューターがない時代に、高度な水利技術が使われていたことに、とても驚かされます。
※ローマ水道橋は、WATER WORKS Vol.01で紹介しています。

太陽の光が栄養豊かな水を育て、
多様な生き物の生活を支えている。

水底の浅い皿池は、太陽光が水全体に行き渡ることで、農業に最適な水温になります。さらに、日の光によって植物が育つため、昆虫や魚も豊富。それを求めて野鳥も集まります。ため池は、ここでしか出会えない生き物や、絶滅危惧種も多く生息する「生物多様性の宝庫」。さまざまな生き物を守り育てる命の器として、その存在はとても貴重なものです。

多様化するため池のはたらき

ため池は、これまでの農業用水の確保だけでなく、近年では農村地域の役割の多様化に伴い、雨水を貯留する機能に加えて、動植物の生息・生育空間、地域住民のやすらぎの空間、地域の子どもたちが生物や自然に触れる空間、地域の伝統文化を楽しむ空間の提供など、さまざまな役割を果たしています。

ふたつとして同じため池はない!
実に貴重で面白い存在なのです。

ため池は、歴史的背景や自然環境、文化など、その土地が持つさまざまな環境や、人々の生活と密接に関わりを持って存在しています。そのため、ため池はどれも個性的なのです。隣り合った近くのため池であっても、育つ植物や生息する生き物など、異なった生態系が見られます。100の地域があれば、100のため池がある。
その地域にとって、ため池がどんな存在であるべきか、どう共存していくかは、それぞれの地域の人々が考え、答えを探していくものだと思います。大切なのは、そこに先人の知恵や努力があったという事実です。まずはため池に関心を持ち、そして、この資産をどのように活かすべきかを、それぞれの地域に合った方法で取り組んでいくことが望ましいです。

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