こちらのサイトでは水に関わるエピソードをお伝えしています。

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雨の少ない地域では、水をめぐる争いが絶えなかったと言います。
そんな争いをなくし、農業用水の安定供給を図るため、ため池がつくられるようになりました。
今から2000年も昔、日本で最初のため池がつくられたと言われています。
その日から、人々は水を得るためにため池をつくり、ため池と共に暮らしてきたのです。
水のあるところに、生き物が集まり、人々が生きる。
ため池のあるところに、社会があり、文化がある。
そんな、水と人、歴史と自然が織りなす、ため池の世界を、そーっとのぞいてみませんか。

水と祈り
古来より人は水のために神に祈りを捧げてきました。今でもため池でその風習が見られる場所があり、写真の「原大池樋抜きの儀」もそのひとつ。水の恵みに感謝を捧げ、五穀豊穣とため池の安全をお祈りする拝礼と振る舞いが終わった後、大池の樋抜きが行われ池の水が轟音と共に水路に流れ出します。

ため池は全国に約21万カ所
多くは江戸から明治にかけて造成

ため池の多くは、降水量が少なく、大きな河川に恵まれない地域などで、水を確保するために人工的に造成されました。日本には約21万カ所存在し、特に瀬戸内地域に全国の約6割のため池が集中しています。この地域は、年間を通じて降水量が少なく、飲み水や農業用水を確保するために、古くから数多くのため池がつくられてきました。
また、最も多くため池がつくられたのは新田開発が盛んに行われた江戸時代から明治時代にかけて。現存するため池の多くは、この時代につくられたもので、中には老朽化による災害の危険性が認められるものもあり、改修工事や保全活動が全国各地で順次行われています。

先人の遺産を、次代の資産に。
「いなみ野ため池ミュージアム」

全国で最も多い※約4万のため池がある兵庫県。中でも東播磨地域には、甲子園球場の約12倍という県内最大の加古大池や、675年に築かれたという県内最古の天満大池など、個性豊かなため池が数多くあります。この地域では、そんな、先人の遺産?を次代の”資産”として引き継ぎ、ため池を核とした魅力ある地域づくりを進めるため、「いなみ野ため池ミュージアム」を発足。農業関係者をはじめ、住民・学校・団体・企業・行政などが団結し、環境保全や未来の地域づくりに取り組まれています。

※統計数字は 2016 年 3 月 農林水産省 防災課調べ

ため池は、昔も今も”命の器”
地域の宝であり、生きた教材です!

現存するため池の多くは、江戸から明治にかけて、米づくりの農業用水を確保するためにつくられたものです。都市化が進む中で、農業用水としての役目を終えたため池は、街の中で孤立していきました。管理されないため池は水質汚染によって悪臭を放ったり、また集中豪雨で溢れたりと、危険で嫌悪な存在として、マイナス面ばかりがクローズアップされていきました。

ため池は、先人の知恵や技術によって生み出された貴重な遺産です。そして、豊かな自然の宝庫でもあります。
かつて、命の器として人々の生活を支え続けたため池は、現代、そして未来においても、生活を育み、命を育てる貴重な存在です。ぜひ一人でも多くの方がため池に親しみを持ち、ため池の魅力や価値を再発見していただけたらと思います。

池本 廣希先生

「いなみ野ため池ミュージアム運営協議会」副会長。
20年以上、ため池の調査、保全活動を続ける環境経済学者。
専門は環境経済学、農政学、食料経済学。2018年3月まで兵庫大学の経済情報学部の教授を務める。
食と農の応援団員として、水、米、食の安全と安心の問題、環境問題、ため池を中心とした地域問題などに取り組む。

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