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氷河は常に動いている

 「氷河」という名称は誰にでも聞き覚えがあるだろう。しかし正しく説明するとなると案外できないのではないだろうか。
 氷河の定義は、ひと言で言い表せる。「長期間にわたって河のように流動する雪氷体」である。
 長年にわたる積雪が融けきらずに残り、積もった雪の下部は重みでつぶされ結氷する。この氷体が河川の水のように重力の作用で斜面や谷を流れる。それが氷河の正体だ。
 では氷河はどこへ向かって流れていくのか? 例えば世界最大の氷河、南極は海へと向かって流れている。ズリズリと流動する氷体は、やがて海にせり出し、ついには耐えきれずにポッキリと折れて塊となって海面に落ちる。これが「氷山」である。
 氷河ができる条件として、気温が低く、積雪の多い地域に氷河は分布している。

天然の巨大貯水タンク

 私たちの住む地球は、想像以上に氷の惑星である。現在、地球上には約20万もの氷河が存在し、陸地の約10%を覆っている。
 世界最大面積を誇る氷河は、南極大陸を覆い尽くす氷河であり、面積にしておよそ1360万㎦にもおよぶ。その大きさは日本の面積の37倍もある。南極大陸を覆う氷床は1000万年以上の歴史を持ち、ドーム状をしているのが特徴だ。最も厚いところでは4000mを超える。富士山よりも高いのだ。もしも南極の氷河が一気に融けると、世界中の海面が70mも上昇する計算になる。第2位がグリーンランドの氷河で、およそ172万6000㎦。いかに南極の氷河が巨大であるかがわかるだろう。
 世界の氷河を合計すると1586万㎦だから、つまり氷河全体の約99%が南極とグリーンランドに存在しているということになる。
 氷河の氷は潜在的な水源と考えられている。氷河の氷は世界の淡水の70%を占めているからだ。氷河はいわば巨大な貯水タンクなのである。実際、ヒマラヤやアルプスなど内陸部に点在する氷河は、夏場になると部分的な融解により、融水が河川に流れ込み、川下に暮らす人々の水源となる。雨を水源とする河川と比べ水流が安定しているのだ。
 また、氷河の白い地表面が太陽光線をほどよく反射し、地球表面の過剰な温度上昇を防ぐ働きもしているのだ。

氷河と氷山ができるしくみ

雪が陸地に降り積もり、雪の下部は重みで結氷し、それが重力の作用で高地から低地へと移動する。これを氷河と呼ぶ。海にせり出した氷河の氷(棚氷)が海に落ちると、それが海面に浮かぶ氷山になる

氷河は陸地の
約1割を覆っている!

南極を筆頭にグリーンランド、そしてヒマラヤ、アルプス、ロッキー、アンデスといった巨大山脈などに点在している

地球上に存在する
淡水の大部分を氷河が蓄えている

表紙写真:WWW.FLICKR.COM photo by ravas51 / 参考資料・写真提供:国立極地研究所

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