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宇宙で水を再生する

宇宙で生活するために

地球よりもカロリーが必要
 NASAのデータ(CR-166420 1982年)によれば、人間が1日生きるために必要な物資は、水が3077g、食糧が618g、酸素が836gと試算されている。これらの物資から得られるカロリーはおよそ2800kcal。現在、日本人の一般男性の必要カロリーよりやや高めである。では宇宙飛行士が日常的に必要なカロリーはどれくらいかというと、地上で暮らすわたしたちよりも多い3000kcal。無重力空間に浮いているからカロリーを使わずにすむと思いがちだが実際は真逆だ。例えば国際宇宙ステーション内で様々な仕事や実験を行う際、身体が動かないよう固定し、なおかつ姿勢を保とうと踏ん張るため、かえってパワーを使うからだという。宇宙で生活するには地上で暮らす以上の物資が必要なのだ。その量を概算すると1人あたり1年間で11トンにも及ぶ。地球からロケットを飛ばして補給するには、輸送費として数百億円かかる計算になる。また人間の生活に伴って発生する廃棄物(排泄物、炭酸ガス、排水)をいかに処理するかも問題だ。これをロケットで地球に運び戻していたらさらに費用がかさむ。そのため宇宙ステーション内では、輸送コストを削減するためにリサイクルに力を注いでいる。

  • 宇宙飛行士の1日の必要カロリーは3000kcalと高め。食事はフリーズドライのものもあれば、パンやナッツといったそのまま食べられるものもある
  • 宇宙食はフリーズドライで軽量化でき、酸素は液化して凝縮できる。しかし水だけはそのまま地球から運ばねばならない。最もリサイクルを必要とする物資なのだ

写真提供/JAXA(食事をとるISS第28次長期滞在クルー、水の玉をキャッチしようとしている若田宇宙飛行士)

人工的な地球を創る

廃棄物をも有効活用する
 国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が健康かつ快適に生活するためには、彼らが日々の生活で排出する廃棄物の処理がカギとなる。廃棄物には炭酸ガス、排水、排泄物、残飯などがあり、これをただ捨てるべきゴミと見なすのはあまりにももったいない。再利用する手立てはないか?そこから着想したのが「宇宙に人工的な地球を創り出す」という方法論だ。つまり地球生態系のサイクルにならって、自給自足型のシステムを宇宙に構築するという試み。この方法論は近年考案されたわけではなく、すでに50年も前にロシア(旧ソ連)やアメリカが地球上で、外部世界と断絶した形で閉鎖実験を行っている(Page04)。
 空気や水、食糧を地球から宇宙ステーションに運べば莫大な輸送コストがかかる。その負担を抑えるにはリサイクルが有効であり、これは同時に廃棄物処理も兼ねるため、JAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASAでは現在も「再生」をキーワードにした研究がすすめられている。

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