水の高低差による位置エネルギーを利用するのが水力発電の基本だが、ノルウェーのオスロ・フィヨルドでいち早く行われている水力発電の方法は、ちょっと変わりダネだ。その名も「浸透膜発電」。海水と淡水の塩分濃度差をエネルギーとする発電だ。
浸透膜とは水は通すが、塩分は通さない濾過膜である。これを海水と淡水の間に隔てるように設置すると、淡水が海水の方に引き寄せられるのだ。この浸透膜は、海水から真水を得るためにも使われているが、淡水の移動する力でタービンを回し、それを発電に生かすとは着想が画期的。環境にもダメージを与えない発電方法だ。現在の発電量はわずか4キロワット程度だとか。電子レンジを数台動かせるくらいのパワーだが、2015年を目標に、小さな風力発電所に匹敵する25メガワット級の発電所を作るそうだ。
当面の課題は、浸透圧の圧力に耐え、塩分によって目詰まりしない機能を持った浸透膜を開発する必要があることだ。しかし実際に稼働しているので、未来はきっと明るい。もちろんこの発電方法の研究は、日本でもなされている。エネルギー革命の急先鋒となるか。
スイスのエネルギー庁は毎年、国内の優れたエネルギープロジェクトに対し、「金のワット賞」を授けている。今年の受賞プロジェクトの中に、「水渦発電」という小型水力発電がある。文字通り、水の渦を動力にした発電だ。その仕組みが面白い。まず川からの落差を用いて水を引き、ローターの設置された円筒形のコンクリート水槽に水を注ぎ込ませる。水槽の底の中心には穴があいているため、ちょうどお風呂の栓を抜いたかのように、水の重力によって渦が生じるのだ。この力でローターを回し、発電する。ローターの回転数は1分間に20回転ほど。とても緩やかな回転なので、川を泳ぐ魚を傷つけることもない
この新技術を採用した小型発電所は、スーレ川の流れるアールガウ州シェフトランド町に昨年設立された。もともとはスーレ川の再自然化と洪水防止機能を見据えたプロジェクトとして起ち上がった。人工的に水禍を作ることで、水中に酸素が取り込まれ、水を浄化する効果も見込めるそうなのだ。現段階の出力量は約10〜15キロワット。およそ20〜25世帯分の電気を賄える電力に相当する。もちろんまだプロトタイプの段階だが、自然回復を促進させながら、自然の力で発電できる新技術に期待を寄せる声は多い。日本は河川に恵まれた国であるから、日本の発電技術の光明になるかもしれない。
取材協力(水渦発電)■環境ジャーナリスト・滝川薫(http://blog.goo.ne.jp/swisseco)
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