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水を思いやるこころ

水を三段階で使い分ける 郡上八幡の水舟

日本屈指の名水の町として知られる郡上八幡。この町では山水や湧水を各家庭に引き込み、古くから伝わる独特の方法で水を上手く利用している。それが「水舟」と呼ばれる階段状に3槽に連なった水槽である。まず水を引き込んだ第一の水槽の水は飲用水として使う。第一の水槽の水は、続く第二の水槽に流れ込む。第二の水槽ではおもに食物洗いを行い、さらに続く第三の水槽では汚れた食器洗いをするのだ。第三の水槽から出た残飯などは、その下にある鑑賞池に流れ込み、飼われている鯉や魚のエサになり、水は自然に浄化され川へと還されていくのである。実に自然に対する思いやりにあふれた合理的な仕組みといえる。

3槽に隔てた水を用途別に使い分ける「水舟」。観光用に町の中に設置されたものもある

玉石を敷き詰めた路地「やなかこみち」。小路の脇を流れる水路が涼しげな風情を醸す

徹底的に水を生かす 富田の清水

富田の清水と書き、"とみたのしつこ"と読む。ここ弘前市の富田地区は、古くから豊かな清水に恵まれ、17世紀後半には紙漉き用の水として使われ始め、昭和初期まで続いた。それ以降、清水は生活用水として地域住民に利用されるようになった。水槽が6つに分かれており、用途別に段階的に使い分けられていた。一番目と二番目の水槽が飲用水として、三番目が米や野菜洗い用または洗顔用として、四番目が紙漉きの材料や漬物樽用、五番目と六番目が洗濯と足洗い用として使われてきた。現在はそのように使われていないが、昭和60年に国から名水百選に選ばれたこともあり、飲用水を汲みにくる人が少なくない。

富田の清水の遺構は木造の建物の中に残され、地域の人々に保護されている

貴重な水を大切に使いこなすべく、水槽が6つ連続してつながっている

しきたりが守られている 浜の川湧水

200年以上も前に掘り当てた湧水が今なお現役で活躍している島原市の「浜の川湧水」。この湧水は海に近い場所であるにもかかわらず、塩分を含まないため地域住民に生活用水として利用されてきた。湧水は、住民たちの知恵によって4つの洗い場に区切られている。一番目から順に魚や食品の洗い場→食器や食品のすすぎ場→食器や食品の洗い場→洗濯場というふうに使用規則を設けてきちんと使い分けられているのだ。このしきたりは長く遵守され、それゆえに不当な汚染がされることなく、いつまでも美しい湧水をたたえる場として受け継がれ、多くの人の生活に潤いを与え続けている。

4つに仕切られた浜の川湧水の洗い場。湧水量は1日に約400トン

地域住民は決められた規則通りにこの豊富な湧水を生活に活用している

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