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針江の家々の前にはどこも生活排水が流れる水路が引かれている。しかし水がきれいなため魚が泳ぎ回っている

「かばた」のある暮らし

使った湧水を鯉が浄化する

針江地区の中心を流れ、琵琶湖に注ぐ針江大川。水は透明で、鮎がひしめいて泳ぐ姿がはっきりと見える

 滋賀県高島市内の針江地区は、焼き板貼りの趣ある民家が肩を寄せ合うように集まった小さな町。町の中には水路が張り巡らされ、川が走り、常にせせらぎの音が耳をかすめる。流れゆく水はとても透明で清冽だ。よくよく目をこらせば、そこかしこに鮎や鯉が悠々と泳いでいる。この水路や川の水の出所を辿ると、各家庭へとつながる。つまり家庭からの生活排水があまりにもきれい、ということなのである。 この針江には、今の日本では珍しい独特の水文化が形成されている。その生活文化は「かばた(川端)」と呼ばれている。針江地区の人々は、京都・大津にまたがる比良山系に降り注いだ雨雪から生じた伏流水を地下から汲み上げ、生活用水として利用している。これだけなら井戸となんら変わりはない。
しかし「かばた」は非常に特異かつ合理的で、極めてエコロジーなシステムを構築している。 噂によれば、なんでも生活用水として使った水を鯉にいったん浄化させてから、水を自然に戻しているというのだ。それは一体いかなる仕組みなのだろうか。針江地区に約200年にわたって受け継がれている「かばた」をこの目で確かめてみたいという思いで、実際に訪れてみた。

町中に湧水が湧き出ており、誰もが自由に飲める場所もある。通学中の小学生が喉を潤す光景も珍しくない

針江地区で一番古い「かばた」。ここの湧水は共同で使われていたそうだ。今ではみんなの天然の冷蔵庫がわり

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