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パイプのプロに聞く、東京の下水道のいま

φ250以下NS形ダクタイル鋳鉄管の各種異形管。ダクタイルとは、組織中の黒鉛を球状にすることで強度を高めた鋳鉄である

φ500〜φ1000NS形ダクタイル鋳鉄管はメカニカル型の継手構造となる。伸縮可とう性と離脱阻止性を兼備し、耐震性に優れた管路を構築できる
写真提供/株式会社クボタ

金子賢司さん。株式会社クボタ、鉄管開発営業部 東京技術グループ長。「最近の下水管技術には、耐震性も求められています」

汚水処理にかけては日本一の森ケ崎水再生センターを訪れた次は、パイプに関してはトップシェアの株式会社クボタを訪ね、現在の下水道事情をうかがった。
「上水管も下水管も、大きな差はありません。強いて言えば、下水管は内部に多少の防食処理塗装をしています。腐食性の環境にありますから」とクボタの鉄管開発営業部の金子賢司さんは説明する。
各家庭につながっている下水管は塩ビ製で、口径は150o ほど。それらの枝というべき管が、道路の下を通り幹ともいえる大口径のヒューム管(鉄筋コンクリート製)やダクタイル鋳鉄管につながり、汚水は水再生センターへと送られているのだ。
「その程度の口径で、下水管が詰まらないかですって? 詰まらないです。生活排水に含まれる固形物の濃度は、1リットルあたりわずか0.2gですから。ほとんど水なんですよ」
多くの人が、いっせいにウンチをしたら詰まるのではないかという心配は無用なのだ。なるほど、森ケ崎水再生センターの職員さん達が、ウンチという意識が薄く、あくまでも汚水だと考えている理由が、ここにきてようやくわかった。
「それよりも、東京を含めた都市部の下水には悩みがありましてね。早い時期に下水道を整備した都市は、雨水も生活排水も一緒に流される合流式(P2参照)。そのため大雨で下水量が晴天時の3倍以上になると、下水処理能力を超えてしまうので、そのときは直接放流といってやむなく河川に汚水をそのまま流しているのが現状なのです」
雨の日に河川が汚くて匂うのはそういうわけだったのである。
「本来は分流方式がいい。けれども都市部は建物がぎっしり建っているから、なかなか改良が難しい。莫大なお金もかかる。もちろん新興都市では分流式を採用しています」
しかし最近は合流改善といって、河川につながる汚水の吐き口に、汚水から固形物を除去するスクリーンや分水槽を設ける方法が採用されている。
「おかげで大雨の時でも、海や川がずいぶんきれいになってきました」
やむなく直接放流が行われている都市部でも、現在ではクリーンな水を自然に還すための対策が、着々と行われているのもまた事実なのである。

地形状況によっては汚水をポンプで圧をかけて送る場合もある(圧送)写真は災害時のリスク分散を配慮して2条並列で敷設された汚水圧送管

シールド内に2条並列で敷設された圧送管。都市域の管渠整備ではシールドやさや管の中に圧送管を敷設することで交通渋滞や市民生活への影響を最小限にする工法が採用されている

流域幹線に採用された汚水圧送管。圧送管を用いることで建設コストを縮減し供用開始を早めることができ、効率的な管渠整備が可能になる

水再生センターの管廊内に敷設された各種連絡管。ダクタイル鋳鉄管は処理場内の標準配管材として各種下水配管に広く用いられている

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