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10年ほどまえに提出されたものの、その後バーチャルウォーターはさほど進展がみられなかったようだ。
ところがここにきて、急速に歩みを早めているような気配がある。沖大幹教授のご活躍がおおきい。
それと世界が水問題に切迫しはじめたということでもあろう。
1990年初頭にアラン教授が思いつきのようにいったバーチャルウォーターという言葉には厳密な定義というものがなかった。
そこで沖教授の資料から、教授自身が採用した定義の変遷を見てみよう。
〜2002年7月18日 東京大学生産技術研究所記者会見より〜
…「食糧を水資源量に換算するとどうなるか」がVirtual Water であると解釈されているが、それは厳密な意味で仮想水(バーチャルウォーターの和訳)ではないとしたうえで、下記のような提案を行った。

ある農畜産物や工業製品を生産するのに必要とされる水資源量をいう。

生産国(輸出国)において実際に使用された水資源量をいう。

消費国(輸入国)でもしそれを作っていたとしたら必要であった水資源量をいう。
このなかで【投入水量】というのが素人にはわかりにくい。一般論という意味なのだろうか。もともといわれたバーチャルウォーターとは、とうぜん【仮想投入水量】に相当する。
〜2008年2月 水工学論文集 第52巻「水の供給源に着目した日本における仮想的な水輸入の内訳」より〜

輸出国で実際に消費される水資源量。これは2002年7月の記者会見では、英語でいうなら、(really required water)であった。ちょっと変更されている。しかしこのおなじ論文中で、あたらしい名称が提案される。

輸出国で実際に消費された水資源量。
2008年の提案であるからこれが最新のようだ。するとバーチャルウォーターは2つに分かれ、輸入国のバーチャルウォーターと輸出国のウォーターフットプリントとなる。
論文のなかで変更した理由がこう述べられている。「『一人の人間が持続的な生活を営むために必要な土地面積』を表す『エコロジカル・フットプリント』の概念を水資源に置き換えたもの」 定義の変遷から、研究者の真実に迫ろうという気迫が伝わってくる。
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