昨年英国から中国に返還された香港。高層の建物が林立する香港島は世界的な観光地として有名ですが、地盤は固い岩盤で、雨水は地下に浸透せず、わずかな地下水源すらありません。もちろん河川も湖もありません。英国統治下の100年の間、24時間給水が行われたのは3分の1の約30年間といわれています。雨水を最大限に集水貯留して利用する、海水淡水化、中国からの分水を受けるなどさまざま苦労を重ねてきましたが、そのひとつに、トイレ用水の海水利用があります。
経済発展著しく、繁栄を誇るシンガポール。この国の経済基盤にとって、水問題はアキレス腱のようなものです。日本の淡路島とほぼ同じ広さの島に人口約304万人、人口密度は世界第3位ですが、川も森林もないこの国には全部で14の小規模なダムがあるだけです。年間配水量の約6割(1989年)は、隣国マレーシアのジョホール州からパイプラインによって輸入しています。
218万人の住民と200万人の昼間流入人口を抱えるパリ。この都市の上水道は地下水が60%、表流水が40%です。地下水はパリから150キロ離れた水源から処理なしで送水し、表流水はセーヌ川やマルヌ川の水を浄化して使用しています。フランスの水道事業の数は15,000、うち4.300の事業が民間会社に業務委託されており、民間会社5社で全国民の約65%に水を供給しています。パリ市の水道は、浄水部門はパリ市と民間会社2社の3者が設立した会社が運営、配水はセーヌ右岸と左岸を2社が別々に受け持っています。
周囲を砂漠と海に囲まれ、ヨーロッパとアジア、アフリカを結ぶ細い陸橋のような形をした地域がイスラエルです。南北に長いこの国は、北部は水に恵まれていますが、南部の砂漠では常に水が不足していました。しかし、その間の距離は数十キロから数百キロ程度しかありません。しかも、北部にはガリラヤ湖という水瓶があり、周辺から流出してきた雨水を一時蓄えることができます。