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「軽い水」と「重い水」。
船の航行を妨げるのは、厚い氷だけではなかった。

 水の密度はと聞かれると、誰でも一グラム/cm3と答えるでしょう。種々雑多の異物を含んでいる下水道の水も、下水管の設計上は水の密度を 1,000としています。でも、厳密には塩分を含んだり、温度や圧力によって水の密度は違ってきます。淡水と海水の密度差は〇、〇〇三グラム/cm3 深海魚しか生息できない一万mの海底では〇、〇四グラム/cm3密度が増えます。  淡水と塩水、温水と冷水、私たちは台所やお風呂でスプーンやミキサー、棒などを使って簡単にかき混ぜ、温度や濃さを同じにすることができますが、 自然界の中では、このわずかな密度の差がなくなって均一の水になるには、かなりの時間がかかります。それで私たちはとても不思議な現象を体験 することになるのです。

 北極探検家として有名なノルウェーのナンセン博士の船は、シベリア沿岸を航行中のある日、それまで快調に進んでいた船の速度が急に落ち、 いくらエンジンをかけ直しても前進しなくなりました。帰国後、この話を聞いたエクマンという人は、当時の海水の観測資料をもとに模型の水槽を つくって実験を行い、その季節のシベリア沿岸では、氷が溶け出して薄められた表面の軽い海水と、その下の重い海水とが二層になっていて、 この二層の境目にはわずかな衝撃を与えただけで波がたつことを確かめたのです。 ナンセン博士の船は、スクリューの回転エネルギーがすべて この内部波を発生させるエネルギーに費やされ、船の前進には役立たなかったわけです。

温度と密度
(淡水)
温度(℃) 0 10 20 30 40
密度(g/cm3) 0.9999 0.9997 0.9982 0.9957 0.9922

塩分と密度
(17.5℃の海水)
塩分(%) 1.519 2.025 2.494 2.999 3.505
密度(g/cm3) 1.0103 1.0141 1.0177 1.0216 1.0254
▲(注)太平洋の平均塩分は3.49%(水温3.73℃)

圧力と密度
(20℃の淡水)
圧力(kg/cm3) 100 200 300 500 1000
密度(g/cm3) 1.0027 1.0071 1.0115 1.0188 1.0383

  密度の違う重い水と軽い水ができるのは、地球を取り巻く 大気の温度や大河川からの流出量、降雨量と海面からの 蒸発量がところによりかなり違うためだそうです。

 日本の漁師さんたちもこれと同じ体験をすることがあり、 まるで海の中に魔物が住みついていて船が後ろに引っ張られるように感じるところから、 船幽霊とか底幽霊と呼ばれ恐れられているようです。

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