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日本一の高さと美しさを誇る富士山、
その周辺には大小無数の湧泉が存在する。

 富士山は三,七七六メートル、日本一高く美しい山です。雪を頂いたその姿は、古くから詩歌に詠まれ、海外でも浮世絵で おなじみですが、気候からみると、富士山一帯は年間降水量が約22億m3という日本有数の降水量を誇るところです。 ところが、表面は見渡す限りごつごつとした溶岩ばかりで水たまりひとつ見えませんし、空へ向かって水を受け止めんばかりに ぽっかりと口を開いた火口部にも火口湖などありません。いったい大量の水はどこへ行くのでしょうか。

 みごとな円錐形をしたこの美しい山の歴史から、その謎をひもといてみましょう。実は現在休火山となっている富士山の内部には、二つの火山が隠されています。最も古い火山は小御岳火山、その後古富士火山、約一万三千年前に新富士火山が噴火しました(図参照)。


このような内部を持つ富士山に降った雨、つもった雪が内部にしみ込むと……。
 富士山の表面を覆う溶岩は割れ目や空洞が多く水をよく通しますから、水は表面に残らずどんどん内部へしみ込んでいきます。やがて古富士火山の上面に達しますが、ここはほとんど水を通さない泥流で覆われている(不透水層)ため、水はここでストップ。新富士山全体の溶岩の割れ目や空洞に満ちた状態で水が蓄えられることになり、地層全体が水で飽和された状態になります(滞水層)。富士山全体が巨大な貯水池というわけです

 さらに雨が降ると、この巨大な貯水池も満水になり、やがて不透水層の上面の形に沿って下へ下へと流れていき、裾野に到達して湧き出します。富士山一帯の湧泉の総湧出量は降った雨に比例するかのように、55m3/秒という膨大な量です。これは、二リットルのミネラルウォーター二七,五〇〇本分に相当します。しかも、気の遠くなるような時間をかけて溶岩の中を通っている間に水は不純物を取り除かれ、大変きれいになります。なかでも、三島で湧き出す水は「化粧水」と呼ばれるほどだそうです。
[左写真] 雨水や雪解け水が伏流となって吹き出した富士山西麓の「白糸の滝」。

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