高圧逆浸透装置の中は、RO膜という真水しか通さない セルロース系の膜で作られたストローが、束になって詰
まっている。直径わずか0.14のストローがぎっしり詰め込まれていると想像いただきたい。
「この並べられたストローとストローの隙間に海水を流し ます。そして海水に、840m潜ったときの水圧に匹敵す る圧力を加えます。するとRO膜を通って、いわばストローの中に水が侵入していくのです」
このとき、ストローの中にしみ込んだ水は真水であり、ストローの外側に残った水は塩分濃度の濃くなった海 水になっている。そうして真水だけを分別して取り出せ
るのだ。
造られた真水は、塩分だけでなく、水に含まれる成 分が全部抜けてしまうので、それだけで飲むと水道水ら しい味がしない。
「これがすべての水を施設で造らない理由です。水の味を調整するために、水道水とブレンドして給水しているの です」
海水から塩辛さがなくなる。ということは人間が、いや人 間ばかりでなく、地上の生きもののすべてが、生命保持のために活用できる、という意味である。地球が「使え
る水の惑星」になるのも、もうすぐかもしれない。だからといって節水意識を薄めてもいいといっているわけではない。海水淡水化施設を稼動させるにもエネルギーコスト
はかかる。海の水を利用しなければならない時代になった現実を、圧倒的に憂えるべきである。 |
 |
これが海水淡水化の心臓部、高圧逆浸透装置。
筒状になった内部には、海水の塩分を取りのぞける高性能なRO 膜が、ストロー状になって詰め込まれていて、真水を得られる |
 |
高圧逆浸透装置の内部構造。中心に海水が流れる管が通され、その周囲をRO
膜で作られたストローがびっしり詰まっている |
|