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波ってどうしてできるか? 知らない人が多いんですよね。
潮と風、このふたつが波を作る。このふたつを気にしながら生活しているのがサーファーという人種なんです。
潮がなぜ気になるか? 沖から岸に向かって押し寄せたうねりが、海底の地形で波となって立ち上がるというとき、適度な深さが必要となる。深すぎると地形なんぞ関係なくなる。
だから潮の満ち引きを知っておくことはとても重要なのです。
つぎに風。風とは高気圧から低気圧への空気の移動です。だからふつうの低気圧のときより、極度な低気圧である台風のときのほうが強い風が吹き、波も強くスピードがある。
だからいちばんいい波とは、強い低気圧があって、しかも地形にあった潮のときということになる。さらに言えば、陸から海に向かって風が吹いている状態、いわゆるオフショアです。波が崩れにくく、いい形で進んでくれる。
あ? どうして岸から沖へ向かう波がないかって? そりゃあ、波ができるようになるには水の量が必要だからです。波打ち際のような浅いところでは無理というものです。小指くらいの波ならできる。
低気圧でしかも地形にぴったり合った潮のときに、そのビーチにいないようではローカルサーファーとはいえない。だとすると、生活を潮に合わせないとならない。僕はプロになるつもりでしたから、アマのときは、朝6時から午後2時まで働くパン屋の仕事をしてました。
サーファーの生活は風と潮が軸なんです。
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◆すずき なおと 1965年下田市生まれ。全日本ジュニアチャンピオン、同準優勝、世界選手権日本代表2回などアマ時代栄光の経歴をひっさげ22歳でプロに転向。 |
伊豆・入田浜がホームビーチ。「うまくない人を見たら教えたくてむずむずする」という鈴木直人プロのレッスンは優しく的確。サーフィンはプロに習うのがいちばんだ。 |
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田牛(とうじ)ってヘルメット潜水で有名なところなんです。あわび、さざえを獲る。100年くらいまえからやっててね。その草分けです。うちのオヤジもそれやってた。だから漁師は僕で2代目だな。もっともちょっと家の事情で漁師をやめて渡船(とせん)をいまはやってんだけど。渡船ってのは釣客を島の磯へ連れて行き、連れ戻す船のことね。
伊豆の海は陸に高い山があるわけではないから昔とあまり変わらない。しかし魚は獲れなくなった。道具がよくなった。乱獲ぎみなんだね。渡船といってももちろん海を航海することにはかわりない。危険性を熟知していなければできる仕事じゃない。
気象の変化がいちばん怖い。時化(しけ)たときの、潮の流れの早い遅い、潮と風の流れが逆、など、長年の経験がないと回避できない危険はいっぱいある。潮と風の向きが反対のとき波はホレる。ホレるというのは巻き込みえぐれる。うかつに乗ると危険なんだ。転覆する危険がある。
ホレた波のまえにまわりこんで、なるべく、平らなところを選んで船を進めていく。それは道のように決まっていないわけで、自分の経験で判断して舵を取っていかなきゃならない。
外気の冷たい冬などに、岸辺であーっと水蒸気が海からあがっていることがある。沖ではそんなことはない。ないけど、目に見えないだけで、海から水蒸気があがっているのは確かなんですね。
雨を作るのは海なんですよ、海。
◆わたなべ いねお 1956年伊豆・田牛生まれ。3児の父。22歳、20歳、14歳、すべて女子という。毎晩9時には就寝する生活。 |
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沖で霧が立つと50メートル先も見えなくなると言う。海のベテランでも怖いそうだ。しかし港へはかならず帰る自信がある。経験だ。 |
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