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vol.10
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 浄水場に勤めるためにはまず都の職員になる。出身が技術系ですから、技術的な職種を希望することはできるけど、浄水場かどうかまでは上の判断だからわからない。僕はこの4月にここ砧浄水に配属されるまで、都庁の浄水部にいました。ここでは土木的な仕事をしています。
 砧浄水場は川から水を取っているんじゃない。浄化するまえの水を「原水(げんすい)」といいますが、砧の場合は多摩川の伏流水なんです。井戸から汲み上げている。浄水場では井戸といわず、「立型集水井」と呼びますが、原理はおなじです。だからそもそもかなり、きれいな水なんです。
 飲んでみてくれますか。どうですか?美味しいですか。ありがとうございます。塩素は、水道水として供給するには基準があり、ある一定量を入れないといけない。しかし水の味はいろんな理由で決まり、塩素がすべてじゃない。冷たいでしょう。やはり伏流水だからでしょう。原水は「暖速ろ過池(かんそくろかち)」へ送られ、そこでろ過されるわけですが、1日とどまっていない。そのうえ、緩速ろ過池には藻類の繁殖を抑えるため遮光ネットが全面的にかけられているので、水温の上昇も比較的少ない。冷たさも水のおいしさの条件のひとつです。
 緩速ろ過池は、原水がもともときれいで、それほど大量の水を処理するのでない場合に用いられる。あるんですよ、こういう浄水場も。川から直接取り込む場合だけじゃあないんです。面白いですか?

◆きのした まさゆき 1968年兵庫生まれ。大学は理学部土木工学科。旅行が趣味で昨年行った沖縄に強い印象を受けた。
集水井とろ過池のあいだの「分水井」からバケツで水を汲み上げる。のぞくとそのまま飲めそうなほどきれいな水だ。


 水道工事店という職業はたいへんやりがいのある仕事です。水がないと生命は生きられない。
 現代に生きる人にとってはそれ以上に大切です。万能とは言わないまでも水道がなければ人々の生活は破綻します。都市の健全性を維持しているのが水であり、水を供給するのが水道です。この仕事を選んでホントによかったと思いますよ。
 いろいろやってきたんです。医療関係に勤めたこともあるし銀座でバーテンをやったこともあります。宅配もやった。
 水は、お手洗いで便を排出し、食器を洗い、衣服を洗濯し、洗面所で歯を磨き、お風呂でアカを落とす。水がなきゃ生活は成り立たない。いきなり病気が蔓延して都市はたいへんな状況に陥るかもしれない。災害のときなによりはやく水道を復興しようとするのはそのためです。
 僕の会社「すいぱと」はふつうの水道工事店と違って、24時間サービスで、どこへでもでかける。お客さまを選らばないんです。徹底的に消費者の立場に立つ。水道の故障はいつどんなときあるかわからないから24時間サービスというのは理にかなったものだと思う。たいへんですけど。
 仕事というのはどうやって進化するかというと、つねにどこまでお客様の立場に立てるか、その歴史なんだと思います。やる前はたいへんだ、とてもそこまでできない、なんて思うでしょう。しかし誰かがやるとそれがスタンダードになる。僕は「株式会社すいぱと」をやっているのはそのあたりをやっているのだと信じている。

◆すずきゆたか 1966年静岡県三島生まれ。株式会社すいぱと代表取締役社長。水道工事店の未来形を探る人物として業界でも注目されている。
行動力と情熱で会社の仲間ばかりでなく業界をひっぱっていただきたい。水道工事店の新しい形をすでに実行している実力派だ。


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