世界水遺産
工場の地下水汲み上げによって枯渇した源兵衛川。1960年代から1990年までの約30年間、源兵衛川は「汚れた川」のシンボルとなっていました。そこで、多くの市民が立ち上がり、NPO・企業・行政が協力して環境改善を進める市民運動「グラウンドワーク三島実行委員会(現NPOグラウンドワーク三島)」が誕生しました。地域住民の声をもとに、グラウンドワーク三島が関係者相互の調整役となり、8つのゾーンからなる親水施設が整備され、協力しながら源兵衛川の水辺環境の再生に取り組みました。この活動は行政も動かし、三島市は92年から延べ10年以上かけ、せせらぎを取り戻す事業に本腰を入れたのです。また、民間企業としては、東レ三島工場によるきれいな冷却水の放流により川の水量が安定し、2000年代初頭、清流が見事に蘇ったのです。
Genbee-gawa history
昭和30年頃までは水量が豊富で美しかった源兵衛川。農業用水だけでなく、カワバタ※で野菜を洗うなど住民の生活用水としても利用されていました。
高度経済成長期、地下水の汲み上げなどにより川の水は枯渇し、生活雑排水の流入やゴミの放置などで水辺環境が悪化しました。
※川のほとりや川のふちのことをカワバタといいます。
湧水が豊富な頃の
源兵衛川(昭和30年代)
水辺環境が悪化した整備前
の源兵衛川(昭和50年代)
安全な環境を整備し、従来の農業用水としても利用でき、何よりみんなが楽しめる憩いの場所となること。自然を体感し、美しい水との触れ合いを大切にした新生「源兵衛川」は、「水と景観」の魅力を五感を目一杯使って楽しむことができます。
まるで川の中を歩く散歩道。鳥のさえずり、川のせせらぎに耳を澄ませ、緑のトンネルをくぐります。
川の中を歩く
昔は洗濯や野菜を洗うなど生活用水として使われてきました。川に面した家屋にはその名残の「カワバタ」が残されています。
今も残る
~カワバタ・手押しポンプ~
江戸時代から旅人や三島の人に親しまれてきた時を告げる鐘。現在の鐘は昭和25年に市民の有志によって再 建されたものです。
自然と建造物が
交差する風景
遊歩道には駿豆線の鉄橋の下をくぐる近道があります走る電車を橋の下から見ることができる、人気の撮影スポット。
伊豆箱根鉄道
源兵衛川にはゴミが捨てられて悪臭を放ち、人も近寄らなくなりました。それが数十年続いたのです。私は毎日出勤前に約1時間ゴミ拾いをしましたが、誰も関心を寄せず、さらにはその上からゴミを捨てる人もいました。「心を変えないと街も川も変わらない!」そう決心し、住民、企業、行政をひたすら訪ね歩き、訴え続けました。なぜこうなったのか、どうすれば再生できるのか。現場から目を背けず、まずは知ることです。やがて源兵衛川再生への機運は高まりはじめたものの、今度は住民、企業、行政の意見がかみ合わない。1年間に84回、3年で200回以上、会合や対話を続けました。お互いの立場を理解することで「対立ではなく協調」を目指したのです。そして各々が100点満点のゴールではなく、お互いが歩み寄れる65点の目標を立てました。情報発信、話し合い、そして自分の背中を見せる。美しく
生まれ変わった今も、源兵衛川を見て、知っても
らうことを続けています。この川がいつまでも
美しくあって欲しい。そう願う一人ひとり
の心が、この川を守り続けることにつな
がるからです。
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