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豊かな水に恵まれた日本
そこには、自然の恵みだけでなく
大切な宝を守ろうとする
人々の"想い"があります。

 森林が多く変化に富む地形、そして四季を織りなす雨や雪の情景。豊かな自然は、水と美しい景観を育み、人々の暮らしを支え、また心に潤いを与えてくれます。人と自然、そして人と水が共生する日本は、多彩な景観を楽しませてくれます。また、草花や動物などの多様な生命を育むとともに、人々が集うことで様々な文化を創ってきました。豊かな自然を、美しい水を、多様な生物や文化を残したい。心打つ自然美や景観は、そんな人々の想いによって支えられ、守られ続けています。
WATER WORKS第27号、テーマは「水と景観」。
今回は、そんな美しい水と景観、そして美しい心が綴る物語を辿ります。

富士山からの贈り物を残したい…

水の都「三島」再生・復活の物語

【三島湧水群のメカニズム】

【三島湧水群のメカニズム】

水の都「三島」の湧き水はどこから来る?

 今から約1万年前、富士山の噴火によって約30kmに渡る「三島溶岩流」と呼ばれる、水をよく通す地層がつくられました。上流で降った雨や雪は地下に染み込み、溶岩流の中を通り、ゆっくりと下流へ移動します。富士山が育む伏流水※は「三島湧水群」から湧き出し続け、また井戸を掘れば美しい水を豊富に汲み出すことができるのです。しかし、高度経済成長期を迎える1960年代、静岡県三島市にある工場の生産活動が活発化し、地下水の利用が急激に増えたことで水資源が一気に枯渇したのです。街の中心を流れる「源兵衛川」は干上がり、かつての清流はドブ川へ。その後、数十年放置された末、コンクリートによる河川の整備事業が動き出そうとしたその時「かつての美しい川を取り戻そう」と、NPO「グラウンドワーク三島」による市民活動が始動し、水の都「三島」の再生・復活をかけた挑戦がスタートしました。

※水が染み込みやすい土地を川が流れると、水が地中にもぐりこんで流れます。この水のことを伏流水といいます。

特定非営利活動法人  グラウンドワーク三島

 イギリス発祥の市民・NPO・企業・行政のパートナーシップによる環境改善活動「グラウンドワーク」を導入。静岡県三島市の水辺自然環境の再生と復活を目的に市内の8つの市民団体 が結集、1992年9月「グラウンドワーク三島実行委員会」を発足しました。現在では20の市民団体が参加。源兵衛川が「名水百選」「世界水遺産」などに選定される他、環境再生活動、地域再生、農業再生、環境コミュニティビジネスなどの取り組み は、国や自治体をはじめ様々な団体から高く評価を受け、表彰されています。

専務理事 渡辺豊博さま

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